mojakotanの日記

ずぼら

2022

 

「本年もよろしくお願いします」

 

艶やかな黒髪が肩から滑り落ちる。

 

寂しい顔をした彼女は

 

失った人を想っている。

 

その人のために美しく手入れされた髪が

 

彼女を慰めるようにまた一束

 

彼女の頬を撫ぜた。

 

思わず伸ばした手を引いて

 

なんで自分じゃないんだなんて

 

流行りの歌詞みたいなことが頭に浮かんだ

 

「よろしくお願いします」

 

何もできない自分は

 

おうむがえしで精一杯。

悩みの記憶

 

「意外とでかい」

 

家電量販店の一角で呟く。店員のお兄さんはですよねえとヘラヘラ笑っている。

 

タブレットを両手で包んでみた。

 

ミニという名がつくくせに、意外と大きいのだ。

 

ガジェットに詳しくない私は、実際に手に取ってときめいた方を選べば良いと簡単に考えていた。

 

 

 

大学入学と同時に配られたパソコンは、一度壊れてからずっと調子が悪い。

 

タブレットは小さいながらもとても賢いらしいので、パソコンの代わりに購入したいと調べ出したら止まらない。

 

ただ、こっちのほうがコスパが良いのでは、こうした方がこれもできる、いや、ここまで使いこなせない、オーバーキルだ…

 

百聞は一見にしかず。これは見に行くしかないと思い立ったのだが、これがどうしてどちらも可愛い。

 

決められずこのまま「やっぱ無くていいや」となる前に購入したいものだ。

嫌いで大丈夫

「つまり、ソイツに嫌われてるって思ってたけど、実はアンタがソイツのこと嫌ってたってこと?」

 

「そう、いう…こと…かな…?」

 

ハッキリしないわね、と美しい顔を曇らせてコーヒーをあおった。

 

「で?」

 

「いや…私って、いなやなつ…だなぁって思ってさぁ」

 

「フン」

 

今度は呆れたように、美しい唇を歪ませてみせた。

 

「たしかにアンタは根暗でバカでどうしようもなくネガティブだけどね」

 

「……」

 

この人の、こういう、清々しいほど裏表がないところが好きだ。

 

自分には無いもので、時々どうしようもないくらい眩しくて、ほんのちょっと苦しくなる。

 

「御人好しなのよ」

 

まぐ、とシフォンケーキを頬張る。

 

大きな口を開けても、彼女は可愛い顔をしている。

 

「アタシだって嫌いな奴は山ほどいるし、山ほどの人間から嫌われてるって分かってる」

 

ごくん、と大きな音を立てて、咽せる手前で私はハーブティーを飲み込んだ。

 

「でも、それが何だっていうのよ」

 

「……」

 

「職場の人間とは最低限仕事が一緒にできればそれ以上仲良くなる必要もないし、アタシのこと嫌いな奴はアタシだって嫌い。ゴキゲンとって好きになってもらおうなんて、考えなくったっていいのよ」

 

そんなことより、寒くなったから新しいコート買いに行くの付き合ってと彼女はコーヒーを飲み干した。

 

「あ、私もマフラー見たい」

 

綺麗な手が領収書を私からひったくる。

 

「アンタのことは、ゴキゲンとってあげる」

 

彼女はニンマリと笑って、コツコツとヒールを響かせてレジへ向かった。

むかしばなし

 

「あの子、子供が生まれたんだって」

 

「今は旦那の稼ぎで暮らせるから、パートで週2、3日働いて、給料は全部自分のものなんだって、うらやましいよね〜」

 

学生だった私たちは大人になって、それぞれの人生を歩んでいる。

 

他の人の歩みが気になるものだ。

 

それでもやっぱり

 

「私今これにハマっててね」

 

と早口で話す

 

あなたの話が一番ワクワクする。

 

あなたの新しい発見を

 

教えてもらうことが好き。

あなたのチケット

「きっと冬も流行りのウイルスが収まらないから」

 

「コンサート行けないなら、ファンクラブに入る意味ないから」

 

そう言って、あなたに会うためのチケットを逃してしまった。

 

無理なら仕方がないと割り切って、チケットを買うべきだったと

 

物凄く、後悔している。

 

私の住む街で、クリスマスに、オーラスに、会えることなんてもう2度とないかもしれないのに

 

自分で逃してしまった。

 

買う気もないけれど、チケット転売サイトを覗いた。

 

あなたに会うには、最低十万円必要らしい。

 

その魅力は当然なのでよくわかるけど、チケット争奪戦に参加しなかったことが悔しい。

 

なんて愚かなことをしたんだろうとじんわり目に涙が浮かんだ。

 

あなたに会えない、今年の冬は寒い。

秘密を共有する者

 

今日も朝から天気が悪い。

 

一瞬の晴れ間にゴミ出しに行きたい。

今日はプラごみの日だ。

 

エアコンの風が直接当たるソファの上で着替える。

緩慢な動きでパジャマのボタンを外すたび寒さで鳥肌が立ち、ぶるりと身震いをした。

 

 

「おはよう」

 

大きな白いハムスターが、艶々の髪を跳ねさせて言った。

 

今週は彼が弁当を作る当番なので、白米が炊き上がった軽快な音楽でベッドから出てきたのだろう。

 

ホカホカのご飯を弁当箱に入れて、詰め過ぎたと笑っている。

 

昨日もそう言ってなかったか?

 

そんなことを考えていると、自然と口元が緩んだ。

 

「あ」

 

靴下が…靴下が裏返っている。

右足の先、裏側にしかないはずの縫い目がくっきりと浮き出ていた。

 

靴下の上からレッグウォーマーも装備してしまっている。

 

これからレッグウォーマーを外して靴下を脱いで表に直して履きなおして…

 

どう考えてもめんどくさ過ぎる。

 

「靴下裏返しではいちゃった」

 

ケトルを持った手が止まって、にっこりと私に白いハムスターが微笑んだ。

 

「そのままでいいよ」

 

たった一言で救われた私は、今日という日を片方靴下裏返しで過ごした。

 

止まっていた白くて大きな手が動き出して、ゆっくりケトルを傾ける。

 

コポコポと音を立ててコーヒー豆の香りがした。

あがりしょう

 

私、人前で発表するときものすごく緊張するんです。

 

いっぱいいっぱい息を吸ってしまって

 

声が震えてうまく息ができなくなって苦しくなる…

 

ずうっと悩まされてきたのだけど

 

何故かこの間の研修での発表はならなかった…

 

何故!?

 

分からないから次に活かせないwww

 

少しは成長できているのかなあと信じ込みたいです。